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時間よりも少し遅れて居酒屋に着くと、一つだけある座敷の個室が開き、ナツミが手招きをしている。
「久しぶり! チハル、ちょっと太ったんじゃない?」
相変わらず失礼なナツミにムッとしながら、サンダルを脱いで座敷に上がると。
「ホント、ちょっと顔丸くなったな」
真っ赤な顔で既にほろ酔いのアキラが私を見て手を挙げる。
そんなアンタは随分垢ぬけたよね、昔はじゃがいもみたいな顔してたくせに、なんてことは飲み込んだ。
今日はきっとそんな話じゃなくて。
あの日の話をしたいのだと思う。
ビールを三杯、四杯、飲み進めながらお互いの近況を話し合ってる中で。
「ユキエの13回忌らしいわ」
ナツミの呟きでようやく話の糸口を掴んだ気がした。
「結局……見つかってないのよね、ユキエ」
「うん」
「あの時ついてってやれば良かったね」
暗い顔をした私たちの脳裏に浮かぶのはあの日のこと。
最後にユキエと遊んだ日のことだ。
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