お母さんの耳はロバの耳

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お母さんの耳はロバの耳

 ぼくのお母さんの耳はロバの耳だ。ぼくが生まれたころは猫耳だったらしいが、いつの間にかロバの耳になってしまったと聞いた。耳が変わったのか、お母さんが()わったのか分からない。  この話をしてくれたのはお父さんだ。お父さんはいつも歩いているので、ウォーキングと呼ばれている。  で、お母さんはいつも帽子(ぼうし)をかぶっている。ロバの耳が生えているのを(かく)すためだ。  帽子を贈ったのはお父さんで、毎年新しい帽子をプレゼントしている。  そしてお母さんの耳がロバの耳なのは、わが()で一番の秘密(ひみつ)なんだ。特にお父さんからは絶対に他にもれないように(きび)しく言われている。  しかしそう言われると言いたくなってしまう。でも言ってはいけない。  ぼくはしだいにがまんができなくなってきて、物置にある大きな(かめ)の中に向かって「お母さんの耳はロバの耳」と叫ぶようになった。そうするとスッキリと気が晴れるんだ。  そうやって毎日、(かめ)の中に「お母さんの耳はロバの耳」と叫ぶのが習慣(しゅうかん)になってしまった。もちろん、お母さんもお父さんもいない時に限ってやっているんだ。
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