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 もちろん中身を見ることなんて絶対にしない。むしろ早く返すべきと思ってる。相手の住所も知っているのだから、さっさと郵送してしまえば簡単な話だってこともわかる。けれど俺は未だにためらっている。  できれば相手に直接、渡したいんだ――。  スマホを手に取り、メッセンジャーの画面を開いて、安堵のため息を付く。まだ俺はあいつのフレンドにいる――自分が完全に拒否されていないという担保が俺の最後の救いになっている。けれどこのままじゃ何も進まないってことも分かっている。  だから俺は最後の決意を文字にしたためないといけないんだ。 ”お前の手帳を返したい”  ついにその言葉を送った。既読が付くまでの合間が怖くて仕方ない。けれど案外早く、相手からの返信はやって来た。 ”いらないから” ”こっちが困る” ”あなたが捨てて” ”俺にまかせるな。お前が確認して捨てろ”  沈黙。どうしてかわからないが、彼女はそこで黙ってしまう。 ”なら……”  俺は震える指でその文字を打った。 ”会ってみないか?”  返信までのわずかな間が、相手の動揺を悟らせた。 ”それはむり” ”なぜ?” ”イヤ、だから” ”渡すだけ。それ以外は何もない” ”……”  俺は最後にそのメッセージを送った。 ”これから伝えるのは俺の勝手な予定で『来い』って意味じゃない。今週金曜日の21時。俺たちが好きだったあの海にいるから。ただそれだけを伝えとく”
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