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驚きのあまりしばらく呆然としていた。
「そなたは誰だ?」
アスタリアに声をかけられ、ハッと我に返った。
私は公爵令嬢リーリエ。
そう言い聞かせながらゆっくり立ち上がり、背筋を伸ばし、堂々と上品に、ニッコリ微笑みながら深々と頭を下げた。
ほんの少し手を震わせながら、ゲームでのリーリエをめいいっぱい演じた。
「ごきげんよう。アスタリア殿下。リーリエですわ」
アスタリアは驚いた顔をして目を擦った。
「リーリエか、すまぬ…一瞬別人に見えた」
夕暮れ時で顔が見ずらかったのかな。
それにしても実物の王子は思っていたより背も高く、金色のサラサラした髪に、吸い込まれそうな翡翠色の瞳。
素敵過ぎて見惚れてしまう。
「リーリエ、そなた階段から転落したと聞いて、これからそなたの屋敷に見舞に行こうと思っていたのだが。大丈夫なのか?」
「は、はい。もう大丈夫です」
私は階段から落ちたのか…
それすら知らなかった。
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