福屋─あなたの死相取り除きます─

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「どうしてですか!? 今月の営業ノルマも達成しました! 会社にご迷惑をかけるようなことは──」  社長は自身の机の引き出しからA4サイズの茶封筒を取り出すと、中に入っていた写真をデスクに並べ始めた。 「……君、この女性を知っているかい?」 「へ!?」  知っているも何も社長が指さした写真の中の女性は、紛れもなく現在進行形で石田がお付き合いをしている彼女のミホだった。驚きすぎて変な声を上げた石田に社長はこめかみを左手で押さえ、大きな失望の息を吐き出した。  写真を手にすると、彼女の隣に男性が写っている。だが、腕を組んで歩いている相手は、石田ではない。四十代ほどのダンディなイケてるおじさん。高級そうなワインレッドのスーツに黒のワイシャツを着こなした、【ザ・社長】という風格を持った男性だった。 「彼は、わが社のライバル会社である【STP(エスティピー)株式会社】の営業課長、(はやし)だ。君も名前くらいは聞いたことがあるだろう」 「はい……」  林という人物の噂なら石田も耳にしたことがある。【やり口が汚い】と。どういう手口なのかは分からないが、営業マンの間で林は評判のいい人物ではなかった。
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