苦しみの雨

2/4
前へ
/5ページ
次へ

 

            君に会った放課後 雨の放課後、傘をどうして持っていなかったんだろう 朝には晴れていた空も、涙が伝うように大雨になっていた 『このままじゃ帰れないな』 そう、つぶやいた でも、すぐ止むなんてありえそうな空だった そう思った私は、走って家まで帰ろうと決めた 走り出したけど、やっぱり雨は気持ち悪い 走るって言っても体力にも限界もあった バス停まで歩いて、そこで雨宿りをしようと思った すると、急に声をかけられた 「使いなよ、風邪ひくよ」 顔はほとんど見えていなかった でも、優しそうな彼は、(男の子)だとはっきり分かった 『ありがとう』 そんな言葉を口にした時にはもう彼はいなかった たった、5文字の言葉も伝えなれなかった 名前も聞けなかった、 傘はどう返せばいいんだろうか—そんなこと、考える暇すらなかった
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加