憧れは遠い昔

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「ファムさんは三か月ほど入院して、また私達の家で住み込みで働く事になったんだ。 前ほどは働けないかもしれませんがよろしくお願いしますと頭を下げてきた。 私達は大喜びしたよ。 その頃は健太郎も受験勉強のために日本へ帰っていて寂しかったしね。 大歓迎だった。 でも、体の調子は悪いみたいで、私達は余計なお世話かと思ったのだけれど、ファムさんの病名と処方されている薬の名前を教えてもらった。 あの頃のベトナムは医療に関しては日本よりはるかに遅れていたから、何とかならないものかと思いながら日本の医療をとことん調べてみたんだ」 昭彦はそこまで話すと、一度紅茶を口に含んだ。 それを見たお手伝いの美智子さんは、新しい紅茶を淹れたカップと交換する。 「日本ではその病気は難病指定されていてしっかりとした薬がもう出回っていて、ちゃんと治療すれば長生きだってできる。 でも、ベトナムにいれば、そんなに長くは生きられない。 下手したら、元々心臓が悪いファムさんは、明日にも死んでしまうかもしれない。 私達はファムさんを交えて、いい解決先はないか考えた。 ファムさんは大の日本好きでいつか日本へ行きたいと、いつも言っててね。 聞いてみれば、ファムさんの従姉が日本に住んでいるというじゃないか。 私達はファムさんに日本での治療を提案してみたんだ。 親戚がいれば長期ビザも取りやすいし、医療費だって面倒くさいけれど手続きをちゃんとすれば公的な補助をもらえて少しは安くなる」
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