憧れは遠い昔

4/18
388人が本棚に入れています
本棚に追加
/188ページ
「いいよ… ロビン、もういい。 神様のいたずらでお互いのもとに手紙は届かなかった。 そう思うしかない。今となっては…ね?」 健太郎はロビンの肩を抱き寄せた。 神様のいたずらにしてはむご過ぎる。 健太郎は可愛かった少女の頃のロビンを思い出し、そんなロビンが毎日泣いて暮らしていたかと思うと、怒りで拳が震えた。 ロビンのママも不憫でならない。 健太郎は窓から見える青い空を睨みつけた。 この世に神様なんてしょせん居ないんだと毒づきながら… 「私達は、もしロビンがベトナムに帰ってきたら、必ず私達のもとへ連絡が入るよう手配をした。 そうする事で、ファムさんの気持ちも落ち着いてきて。 それで、ファムさんはこの家にやってきたんだ」 「こ、この家に?」 健太郎は驚いて、そう聞き返した。 「この家に居たなんて、僕は全然知らないんだけど」 健太郎の驚きように、みどりも昭彦も美智子さんまでクスッと笑った。 「だって、あなたはイギリスに行って、三年は日本へ帰って来なかったじゃない? 夏休みは友達の家に行くんだとか、冬は皆とクリスマスを過ごしたいんだとか言って」 ロビンは健太郎が本当に何も知らなかった事に納得してしまった。 自分の興味がない事柄には、普段の生活でもそういうところがあるから。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!