憧れは遠い昔

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そう言われてバトンを渡された美智子さんは、改めてロビンを見つめる。 そして、涙を浮かべてこう言った。 「ロビンちゃん、おかえりなさい…」 ロビンは思いもよらない展開に心がついていけない。 それでも、今この時間が現実なのだと心に言い聞かせた。 ママの事を想像するだけのあの苦しい日々は、ロビンの心の扉に重く固い鍵をかけた。でも、今、その鍵が緩み始めている。 「ファムさんがここへ来てからは、本当に楽しい二年間でした。 大奥様も私も一目でファムさんの事が大好きになった。 とてもチャーミングで働き者で、心が澄んでいて。 今日、ロビンちゃんを見て、すぐにファムさんを思い出した。 くるっとした目元がファムさんそっくり… あと、笑った時に少しだけ見えるえくぼまで。 ファムさんはここへ来て、高いお薬は買えなかったけれど、でも日本で処方されたお薬が合ったみたいでしばらくは見違えるほどに元気になって。 東京の浅草や栃木の日光や、大奥様も一緒に色々な場所を巡る事もできた。 大奥様への気遣いは私にとっては学ぶ事だらけで、ファムさんと一緒に仕事をする事はすごく勉強になったし、とても楽しかった。 でも、ロビンちゃんの事は一日も忘れた事はない。 毎日、ベトナムにある日本領事館にメールで近況を聞いていたくらいだから。 ロビンからの連絡はないかって」
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