3人が本棚に入れています
本棚に追加
「押し入れに敷布団があるから、それで寝ようか。一緒に出すから手伝って」
「はーい」
2人で押し入れにある布団を出すと、傷がついた床に敷いていく。
出雲は窓側に寝ることにし、少女は押し入れに沿って布団を敷いて寝ることになり、数分もかからずに布団を敷き終えると2人は静かに眠ることにした。
眠りに入ってから数時間、静かに寝ているとどこからか声を押し殺して泣く声が聞こえてくる。
目をゆっくりを開けて体を起こして周囲を見渡すと、部屋の右側にあるタンスに体を預けて泣いている少女の姿が見えた。
(泣いているのか? こんな夜更けに何かを思い出したのだろうか?)
声を押し殺してすすり泣いている姿を見ていると、少女がお母様と言葉を発した。
「お母様をあんな姿にしようと思ったわけじゃないの……あれはお兄様が仕掛けたことなの……」
(お兄様っていうのがやはり原因なのか? お父様っていう人のこともあるし、何かドロドロとした事情がありそうだな)
少女の発している言葉を聞いて、出雲は何か深い闇がありそうだと想像が出来ていた。
それから数分間少女の言葉を聞いていると、泣き疲れてしまったのかパタリと床に倒れて寝息を立て始めていた。
「泣き疲れて寝ちまったか。布団で寝ないと風邪をひくぞ?」
優しい口調で話しかけるも、寝ている少女には聞こえていない。
出雲は少女を抱えると優しく布団の上に寝かせることにした。
「これで暖かく眠れるだろう。明日には話を聞きださないとな」
そう呟くと再度眠ることにした。
これから何が起きるかわからないし、また刺客が襲ってくるかもしれないと考えると億劫な気持ちになる。
しかし少女に関わってしまった以上、何かをしてあげたいとも思う気持ちもある。出雲は出来る限りのことをしてあげようと心に決めていた。
翌日。
出雲は多くのことを考えていたが熟睡をしていたようで、何かに頬を突かれた感触で目が覚めた。
「もう朝か……おはよう……」
「おはようー。もうすぐ朝ごはんが出来るからそこで待っててね」
カチャカチャと食器を動かす音が聞こえていると、キッチンの方を見て少女が何かを作っている姿を見ていた。
「もうすぐ目玉焼きが出来るから、そこで待ってなさいね。顔でも先に洗ってきたらどう?」
「そうする」
目を擦りながら風呂場の近くにある水道で顔を洗うと、いつの間に起きていたんだと少女のことを考えていた。
「まさか先に起きて朝食を作っていたなんてな。美味しい匂いがしたし、お腹が空いてきたな」
顔を洗い終えた出雲はリビングに移動をすると、そこには料理を小机に置いている少女の姿が見えていた。
最初のコメントを投稿しよう!