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「さ、早く食べないと管理人さんが来ちゃうわよ? 毒なんて入れていないから安心してよ」
「う、うん。ありがとう」
(夜中に泣いていた時の姿が何だったんだ? あれもこの子の一側面なのかな)
弱さを見せていた少女の素の姿を見てしまっているので、この目の前で喋っている姿も1つの側面なのだろうと考えることにした。
「弱さも強さか……どこかで聞いた言葉だな……」
「何か言った?」
「いや。なんでもないよ」
「そう? 冷めないうちに早く食べてね!」
少女はウインナーや目玉焼きを作っていたようで、白米と共に置かれたその料理はとても空腹時には涎が出るほどに美味しく見える。
「私は料理が好きで結構作るのよ。もし機会があれば他にも作ってあげるわね」
「ありがとう!」
床に座りながら出雲は木製の箸を手に持って朝食を食べ始める。
ウィンナーや目玉焼きを食べ進めると薄い味付けだが素材の味を活かしていると感じて、美味しいと言う言葉が自然と口から出ていた。
「これ凄い美味しい……今まで食べたどの料理より美味しい……」
自然と言葉から出ていた言葉を聞いた少女は、笑顔でありがとうと返答をしていた。
「さて、食べながらで悪いんだけど、色々と教えてくれないかな?」
「そうよね。昨日、あんなことがあったんだし知りたいわよね……」
ゆっくり食べ続けている少女が、重い口を開けて自身のことを話し始める。
「私の名前は篁美桜よ。ここから東にある島国から来たわ」
「東にある島国? そこに島国なんてあったっけ?」
腕を組んで考えている出雲を見た美桜は、あるのよとクスクスと小さく笑う。
「島があるところだけ濃い霧で覆われているけど、領海内だけは晴れているのよ。都合がいい魔法ってところかしら? 国に入った人は牢屋に入れられて処理されているらしいわ」
「処理ってどういうこと?」
「言葉通りよ。殺されているってことよ。私がそのことを知ったのはつい最近だったわ……国内で暮らしていると思っていたけど、外から来た人達のことを処理すると決めたのはお父様とお兄様と知った私は、お母様と共に抗議をしました……だけど……結果は昨日の通りです……」
(抗議をして、それから何かをさせられて刺客に襲われたと……何かの儀式をさせられたみたいだけど、それで母親に何かがあったのかな?)
多くのことを考えている出雲に対して、食べながら出来ることをするしかないわと言っている。
「あ、ちなみに国の名前は陸奥というわ。この大和国とは深い関りがあるらしいわよ」
「深い関りか……俺は知らないけど、どこかに資料とかあるのかな?」
「わからないわ。だけど、関りがある以上はどこかに必ずあると思うわ」
それからも2人は話しながら朝食を食べ続けていた。
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