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「さて、食べ終えたし早く出る準備をしないとダメよね。片付けているから準備をしてちょうだい」
「はーい」
何故か仕切り始めた美桜の言葉に従いながら、出雲は家を空ける準備を始めていた。
「急に仕切り始めたな。王女として生きてきたから、命じたり仕切るのが得意なんだろうな」
小さく笑いながら服や道具などを集めると、仕事で使用をするリュックサックに詰めていく。リュックサック容量の半分を埋める程度しか持って行くものがなかった。
「準備終わったよー」
「早くない!? まだ片づけ終わってないわよ!」
「服とか筆記用具類しかなくてね。あ、あとはお金を引き出す印鑑を忘れるところだった」
危ない危ないと言いながらタンスの一番上の引き出しを開くと、そこの奥に腕を入れて印鑑を引き出した。
「これがないとお金を引き出せないや」
「そうなのね。私は引き出したことないし、言えばもらえてたからよくわからないわ」
「言えばもらえたのは王女だったからだろうね……普通は出てこないよ」
空笑いを浮かべながら印鑑をリュックサックの中に入れると、部屋の扉が叩かれる音が聞こえてきた。ついに来たかと呟くと、そのまま扉を開けに行く。
「はーい。管理人さんですかー?」
扉を開けるとそこには管理人の男性の姿があり、準備は終わりましたかと話しかけてきた。
「あ、終わりました。お待たせしてすみません」
「いえ、こちらの都合なので謝る必要はありませんよ。あれ? そちらの人は昨日いましたか?」
(やべ! 普通に篁さんを見せちゃった! 何か言われるかな……)
そんな出雲の考えなど当たらなかったようで、管理人の男性はお友達ですかと特に勘ぐることなく聞いてきていた。
「あ、そうです! 一緒に片づけや整理などをしていました!」
「そうなんですね。それではこれから業者の人などが来るので、お早く」
「わかりました。さ、行こうか」
背後にいる美桜に声をかけると、2人して部屋から出て行く。
出雲はリュックサックを背負い、美桜は荷物がないので手ぶらである。ただ、初めに着ていたワンピースのような一枚布を纏っているので、どこか怪しい雰囲気が漂っていた。
「フードは被らなくていいでしょ……騎士に話しかけられたら面倒だから、それは取ってね」
「そう? わかったわ」
フードを取った美桜は、その銀髪の髪が太陽の明りに照らされてとても綺麗に輝いて見えていた。
その髪を見ていた出雲に気が付いたのか、美桜が見過ぎよと小さく笑いながら注意をする。
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