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集合住宅を出た二人は、朝日に照らされながら商店街を歩いていた。
既に商店街には先日と同じように人通りが多く、活気に溢れているようである。出雲は美桜と共に商店街を歩いていると、突然あれが食べたいと言う声が耳に入った。
「あれって? 何かあったの?」
右隣を歩く美桜の方向を向くと、そこにはフライドポテトを売っている店が見える。美桜はその店の前で立ち止まると、美味しそうと呟いている様子である。
「それが食べたいの? ていうかさっき朝食食べたばかりじゃんか……」
「私のいた国にはない食べ物ばかりだから、興味が湧いてね。ちょっとくらいいいじゃない、ね?」
出雲に対して拝むような形でお願いと言い続けている。
どうしたものかと悩んでいると、美桜が買ってくれるのねと強引に出雲の手を引いて店の前に押し出した。
「ちょ、ちょっと!? まだ買うなんて言ってないよ!?」
慌てながら買わないよと言っていると、店の店主が買ってやれよと話しかけてきた。
「いやいやいや! 朝食食べたばかりですから!」
「彼女さんが欲しがっているんだろ? なら、買ってやるべきだ」
彼女さんと言われて戸惑うも、美桜が買ってよ体をくねらせながらおねだりを続けている。
「彼氏でしょ? 買ってよー」
(きゅ、急に彼氏でしょって店主の言い方に乗るなよ! これは買うしかないのか……)
肩を落としながらポケットに手を入れて小銭がないか探すと、何個か硬貨が指に触れる感触があり、数枚を掴んでポケットから出した。
「500セタしかないけど……」
「おう! ピッタリじゃねえか! ほら、これを受け取りな」
「ありがとうございます!」
輝かしい笑顔を浮かべながら、美桜は店主から長方形の紙製の箱に入っているフライドポテトを受け取った。
ちなみにセタというのは大和国で使われている通貨の単位であり、その国によって通貨の単位は違う。各国にある換金所にて使える通貨に変えることで、持っている通貨を活かすことが出来る。
「ありがとう! 優しい彼氏さん!」
「ははは……そりゃどうも……」
空笑いを浮かべ、フライドポテトを食べながら歩く美桜を追いかける。
美桜は美味しいと言いつつ商店街をキョロキョロ見ているようだ。
「まだ他にも食べるの? よくお腹に入るね」
「そうねー。私の国では魚とか野菜が主だったからね。こういう食べ物が食べたことがないのよ」
「そうなんだね。なら色々な種類の食べ物があるから、沢山食べてよ」
「ありがとう!」
「ただし、食べ過ぎには注意だからね!」
美桜は気を付けまーすと適当な返事を出雲に返していた。
「お腹壊しても知らないからね」
「その時は助けてくれるんでしょ?」
心を読まれていたのか、何かあったら助けようとしていたことがバレてしまっていた。
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