3人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなことを話しなが出雲は横を歩く美桜を見つつ、目的地を目指す。
賑わっている道を進みながら周囲を見渡している美桜は、商店街ってここだけなのと話しかけてくる。
「ここ以外にも商店街ってあるの? 結構賑わっているから、ここ以外にあるのかと気になってね」
「そうだね……ここは南側で一番盛り上がっている場所なんだよ。北側はまた違って落ち着いた雰囲気の商店街があって、西と東にはデートや遊びで使える遊園地やおしゃれなお店が多いよ」
自身の国にはなかったであろう施設の名前や商店街の内容を聞き、目を輝かせて行きたいと何度も言っていた。
「そのうちね。とりあえず今は君のことを報告しないといけないからね。それはそのうちに連れて行くよ」
「本当よ!? 絶対だからね!」
「はいはい」
言葉を流して聞いていると、美桜が突然そうだわと声を発する。
「今度はなに? また食べたいものがあったの?」
「違うわよ! さっき、私のこと君って呼んだでしょ?」
「呼んだけど? 何かあった?」
美桜は唇に力を入れて何かを考えているように見える。静かに歩き続けていると、美桜って呼んでと声を上げて言う。
「きゅ、急になに!? 美桜って呼んで?」
「そうよ! 君って言い方って少し他人行儀過ぎない? あんなことがあったんだし、もう赤の他人じゃないでしょう?」
「刺客と戦ったけどさ、それで赤の他人じゃないって言えるものかな?」
「言えるのよ。命を懸けた戦いで戦わなくてもいいのに、私を守るために戦ってくれたんでしょう? それはもう運命よ」
運命。
そう言われた出雲はそうなのかと悩んでいた。たまたま出会ってたまたま刺客が襲ってきたから戦っただけだ。たったそれだけで、それほど早く距離が縮まるのだろうかと悩んでいた。
「まあ、君がそう言うのならそう呼ぶよ」
「また君って言った! み・お! 美桜よ!」
(し、しつこい……! はぁ……逆らったらまた長くなりそうだから、従っておくか……)
諦めた出雲は、美桜の言葉に従うことにした。
「そうするよ。ちゃんと美桜って呼ぶよ」
「それでいいのよ。私も出雲って呼ぶからね」
「おう、なんかくすぐったいな……」
頬を掻きながら照れていると、美桜が背中を叩いてシャキッとしなさいと言っている。
出雲はごめんと言いながら美桜と共に歩いていると、商店街を抜けて静かな会社街に出た。
「急に静かになったわね。キビキビ真顔で歩いている人ばかりだわ」
「ここは会社街だからね。国の重要な施設や、それに連なる会社が多くある場所なんだ」
「国に連なる会社?」
小首を傾げている美桜に対して、ここで暮らせばわかるよと笑顔で2人は話していた。
最初のコメントを投稿しよう!