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会社街に入り数分間歩いていると、出雲は目指している配達所に到着した。大和国の首都にある配達所なのでその規模はとても大きく、会社街にあっていいのかと思う程に敷地面積が大きかった。ちなみに、出雲が暮らしているのが大和国首都の武蔵である。
「他の会社の10倍以上あるじゃないの! 横長の5階建てかしら? その建物が何個も建ち並んでいるし、大きなリュックサックを持った人が何十人も配達所って看板が掛けられている建物に入っていくわ」
美桜は目を大きく見開きながら配達所の外観を見渡している。
ここは大和国武蔵本店という名称であり、職員は1万人を超す規模である。ここから各場所で戦っている騎士に補給物資を届けたり、配達士が使う道具の開発なども行っている場所である。
「配達士はこの国に仕える国家職員なんだ。国の発展のために働く職員のことで、国に迫る脅威を払うことも仕事のうちなんだ」
「そうなのね。だからこれだけ人がいて、敷地も広いのね」
首を左右に動かして、配達所に入る人達を見ている。
沢山の荷物を持っている人がいるわとか、集団で固まって出てきたわなどど楽しそうに言葉を発しながら見ている。出雲はその姿を見ていると、初めて配達所に来た時のことを思い出していた。
「俺も最初はあんな風に目を輝かせていたな……」
遠くもなく近くもない日のことを思い出していると、美桜が中に入りましょうよと出雲の右手の袖を掴んで揺らしてくる。
「中も見たいんだけど? それに私に合わせたい人がいるんじゃないの?」
「あ、そうだった。ちょっと昔を思い返しててね」
「昔って、それほど生きてないでしょうに」
美桜に突っ込まれながらも、出雲は入ろうかと配達所に歩いて行く。
配達所の正面入り口の扉を静かに開けると、目の前に受付カウンターが見えた。出雲はそこに近寄ると、受付カウンターに座っている女性に所長はいますかと話しかける。
「はーい。所長ですかって、出雲君じゃない。わざわざ私に言わなくても自分で所長室に行けばいいじゃないですか」
「いいじゃないですか、加耶さん」
出雲に名前を呼ばれた加耶は、何か紙のようなものを見始める。
加耶と呼ばれた女性の名字は龍宮と言い、龍宮加耶が氏名である。加耶は耳を越す長さの艶のある茶色の髪を持ち、髪型はボブのように見える。また、いつもおしゃれをしていて目鼻立ちがハッキリしていることから視線を集める綺麗な容姿をしていることで有名である。
「今は所長室で執務中みたいですね。今なら会えると思いますよ」
「ありがとうございます。行ってきます」
加耶に一礼をすると美桜を連れてその場を離れる。
その際に美桜もありがとうございますと言うと、加耶が口を開けて驚いていた。
「可愛い……こんなに可愛い人がいるのね……お人形さんみたい……」
加耶は美桜に見惚れてしまっているようで、その動きを止めて見つめていた。
出雲はその様子に気が付いたのか、美桜に早く行くぞとその手を握って所長室を目指す。
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