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所長室は5階の奥に作られている。
そこは所長室や会議室のみがあり、所長や副所長に各管理職達が日々会議を行っている場所でもある。
出雲は美桜と共に階段を上って所長室に移動をすると、そこには多数の職員が列を形成していた。何が起きたのかと唇を尖らせて並んでいる職員に聞いてみることにした。
「すみません。いつもは列なんてないのに、何かあったんですか?」
「ああ、黒羽か。お前今日は休みじゃなかったか?」
「ちょっと所長にお話があってね。ていうか、この列は何ですか?」
出雲が話しかけたその男性は、最近騎士への支援が多くて物資が不足しているらしいと言葉を発する。
「色々な部署が所長に費用の増加や、製造ラインの新設を頼んでいるらしい」
「そうなんですね。俺も最近出動が多いしなー。なんか魔物の動きも活発だし」
「それもあるんだよ。魔物からの被害も各都市で増えつつあるので、それの防衛にも駆り出される始末だからな」
ため息をついている男性は自身の番になると、出雲に行ってくるといいながら所長室に入っていく。
「そんなに所長って人は、偉い人なの?」
長蛇の列を見て美桜はそんなに凄い人なのかと小首を傾げて聞いてくると、出雲はそこそこに偉い人だよと返答をした。
「そうなのね。所長室というくらいだから、偉いんでしょうね」
「一番偉いからね。国に意見を言ったり、この会社で一番忙しい人だよ」
美桜の質問に答え続けていると、ついに出雲の番になった。
所長の秘書である金髪で長髪の女性に室内に促されて、2人は入室をする。部屋の中は書類の束が部屋の中央にある机に積み重なっており、仕事量の多さが一目でわかる。
「おう、お前か。今日は休みなのに何かあったのか?」
出雲を見て手元にある書類に何かを書きながら話しかけてくる。
所長の名前は新藤仁という。仁は40歳の若さで他の職員を追い抜いて所長に任命をされた人物である。
黒髪で短髪の髪を持ち、右頬には何かで斬られたであろう傷が斜めに入っている。筋骨隆々な体格をしており、配達士の制服が若干着づらそうに見える。
「いや、少し報告したいことがありまして……」
「後ろにいる銀髪の女の子のことか? 確かに何か訳ありに見えるな。お前はこれと決めたらどんなことにも首を突っ込むから、また何かに巻き込まれたのか?」
仁は出雲がどのような性格なのか理解をしているようで、一挙手一投足から何を考えているのか理解しているようだ。
「まずこの子の名前は篁美桜と言います。昨日倒れているのを見つけて、家に連れて行き休めようとした時、美桜を狙っている刺客が家に攻め入ってきました」
刺客が攻め入る。
その言葉を聞いた仁は、何だそれはと席から立ち上がって声を上げた。
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