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「玄関から綺麗にしないと散らかり続けるわよ?」
その言葉と共に少女がリビングに移動をすると、出雲の部屋を見てさらに驚いてしまう。
「リビングはそれほど散らかってないのね。奥にある窓の側に机と椅子が置いてあって、部屋の中心に小机とマットがあるだけなのね。部屋の大きさにしては簡素じゃないかしら?」
「まあ、孤児院から出た時から魔法配達士の仕事をしていたから特に買い物とかはしていなくて、必要最低限の物しか買ってないね」
出雲の部屋は15畳のリビングとトイレに風呂がある部屋となっており、1人で暮らすには不自由のない広さを有していた。
少女は静かに部屋を見渡すと、床に座って疲れたわと呟いているようである。
「地面に倒れていたのは、空腹以外に何か理由があったの?」
単刀直入に聞くことにした出雲は、少女の目の前に座って何か理由があるのか聞いた。
すると少女は逃げてきただけよと、聞き取りずらいほどに小さな声で言葉を発した。
「え? 逃げてきただけ? どういうこと?」
「ある秘密を知ってしまったから、私を殺そうと刺客が送られてきているの」
刺客と聞いて、出雲は驚いてしまう。
まさか殺されそうになっているとは思いもよらず、1人で刺客から逃れてここまで来たことにも驚いてしまっていた。
「刺客からって、大丈夫なの!? ていうかどこから来たの?」
少女は顎に人差し指を乗せて可愛い顔をしながら唸っていた。
「う~ん……東にある大国とでも言っておきましょうか」
(東にある大国? それって複数あるから分からないな……明日にでも配達所で聞いてみるか)
「今はそこまで詳しいことは聞かないけど、まだ追われているんだよね?」
「そうよ。今も隙を見られたら殺されるかもしれないわ」
「本当!? それはヤバすぎでしょ……」
少女の言葉を聞いて剣を腰に差していたほうがいいなと思い、出雲は部屋の角に立て掛けている剣を手にした。
「剣を使うのね。私は魔法だけかな」
「魔法だけだなんて凄いね。強い魔法を使うの?」
「それは秘密よ。乙女には秘密が多いのよ」
(秘密が多いな。隠していることを聞き出すことは無理か)
「とりあえず敷布団を出すから、それで今日は寝てくれ」
「ありがとう! まさか暖かい布団で寝られるなんて思わなかったわ。今日も野宿かと思ってたし」
「今日も? 何日か野宿だったの?」
「3日くらいかな?」
その言葉を聞いた出雲は口を開けて呆然としてしまった。
隣を歩いていても良い匂いしかしなかったし、背負った時も髪から甘い良い匂いしかしなかった。
「風呂にも入っていないの?」
「そうよ? 臭かった?」
「いや、良い匂いしかしなかった」
その言葉を聞いた少女は出雲の顔を軽く叩いた。
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