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「それはセクハラっていうのよ? あまり匂いを嗅ぐのはダメ」
「はーい。ごめんなさい……」
頭を下げて謝ると少女は許すわと笑顔を出雲に向けた。
「ありがとう。さて、風呂に入る? それとも寝る?」
「今日はもう疲れたから寝させてもらうわ」
少女が敷布団に手をついた瞬間、奥にある窓ガラスが突然壊れた。
その窓ガラスは自然に壊れたというよりも誰かに破壊された感じであり、壊された窓ガラスの破片が2人に襲い掛かろうとしていた。
「大丈夫か!? 布団の中に入るんだ!」
すぐに床にある布団で少女を覆ってガラスの破片を防いだ出雲は、即座に窓の方を向く。
そこには黒い無地な仮面を被り、全身を覆う黒いマントを纏っている刺客と思われる人が壊れた窓から部屋の中に侵入をしていた。体型はマントによって判断が付かないが、おそらく男性だろうと出雲は考える。
「あいつが私を殺すために雇われた刺客よ。今までどうにか逃げてきたけど、もう場所を突き止めたのね。お早いことで」
少女が刺客を見据えながら早いわねと言うと、そこまでして殺さなければいけない理由の疑問が生じていた。
「お前がこの人を殺す理由は何だ? この人が何をしたんだ!」
出雲の言葉を聞いた刺客は、少女を指差して重罪を犯した犯罪者だと言い放つ。その言葉を発した刺客は、仮面によって声が籠っているものの声質的に男性であると断定が出来る。
「殺させると思うか? 勝手に家を壊して、この人を殺させるものか!」
その言葉と共に腰から剣を抜いて構える。
出雲の剣を見た刺客は、腰に差している黒い剣を抜いてその切っ先を出雲に向ける。
剣を突きの態勢で構えている刺客は、出雲を見据えてただならぬオーラを放っている。
「その女は世界を混沌に陥れるぞ? それでも守るのか?」
「世界を混沌に? 俺にはそう見えないけどな。ここにいるのは刺客に殺されそうになっている少女だけだ!」
「お前の目は節穴だな。ここで共に死ぬがいい!」
刺客が鋭い突きを放つと、出雲は持っている剣で攻撃を受け流し、そのまま風切り音が聞こえる程の速度で剣を振り下ろした。
その攻撃を刺客は体を横にずらして攻撃を回避すると、2人から距離を取って体勢を整えて武器を構える。
「機敏に動くな……この部屋でさ!」
体勢を整えている刺客に向けて剣を水平に振るうが、アクロバットな動きで避けられてしまった。
攻撃を避けられると思っていなかった出雲は、眉間に皺を寄せながら後方に下がる。
「直情的な攻撃だな。そんな攻撃じゃ俺を殺すことはできないぞ」
「そうみたいだな……俺も本気で戦う必要があるようだ」
気を引き締め直した出雲は、中段で構えている剣に魔力を流し込む。
すると魔力を流した剣の鋭さが増し、切れ味が上がる。
「本気を見せてやるよ……ここに来たことを後悔させてやる!」
「やって見ろ! 簡単には殺されん!」
出雲と刺客の2人は互いに見合ったまま仕掛ける隙を伺っているようで、その場に静寂が流れていた。
どちらかが先に仕掛けるのか、どちらが先に隙を見つけるのか。緊張が流れる部屋にいる美桜は生唾を飲み込んで2人を見ていた。
(隙が見つからない……この刺客、相当な修羅場を経験しているな……でも、俺も前線で戦っていたんだ! 負けるはずがない!)
刺客の全体を見て隙を伺っていると、視線を動かした瞬間に攻撃を仕掛けてきた。剣を上段数回、中段数回と流れるように振るってくるも、その攻撃を表情を変えずに受け続ける。
体勢を崩さずに攻撃を受けたり受け流していると、刺客は右手を剣から離して魔力を集め始めた。
「剣じゃ埒が明かないな。なら、これならどうだ!」
右手に黒い魔力を集めて丸い球体を作り出した刺客はその球体を放つと、一気に距離を詰める。
出雲は放たれた丸い球体を剣の側面で上空に放つと、天井を突き破って外に飛び出した。
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