1.お一人さま

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1.お一人さま

「やべえってマジ。お前。やべえよ」 放課後だった。 机を挟んでスマホゲームに夢中になっていた俺たち三人の中で、唐突に直哉(なおや)が言った。俺はスマホから目を上げないまま、ふざけたような高い声を出した。 「やべーだろ。俺昨日から課金解禁なんだ」 「ちげーよアホ」 直哉がスマホを左に九十度傾けた。すぐに俺のスマホはバイブ音と共に大きく震えて、画面いっぱいに浮かんでいたバルーンが次々と弾ける。 「あ~~あ~~ああ~~っ」 「シャアーッ」 直哉とその隣の太彦(たひこ)が派手なハイタッチをする。パチンと乾いた音が教室に響くと、三つ前の席の女子がすごい形相で俺たちを振り返った。 「うるさい!ゲームするんなら購買行ってよッ」 「なんでだよぅ。購買でやってたら追い出されたんだよぅ。許してくれよぅ」 「なんじゃそりゃ。帰れッ」 怒鳴られても俺たちは結局、学校の終了チャイムが校舎に鳴り響く十七時まで教室に残って、いつまでも駄弁って、時々何をしているのかと覗きに来た女の子と喋って、一人でやると特に面白くもないゲームをみんなでやった。
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