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真夜中のむっつり
風を切って、真夜中の商店街を駆けてゆく。
月が奇麗だなんて物思いに耽る暇なんてない。軒並みシャッターが下ろされた店を横目に飛ぶように走っては、入り組んだ路地を右へ左へ曲がってもしつこく迫ってくる四人の追手。
—いたぞ!
—そっちだ、逃がすな!
追いかけてくるのは真っ黒な軍服姿に抜き身の日本刀を握りしめた男たち。おお怖い怖い。静かな夜に響く奴らの物騒な声は普通に近所迷惑なのだが当の本人たちはお構いなしだ。
—待てコラ!
待てと言われて待つ奴がどこの世界にいる。まったくもって面倒くさい野郎ども。ほいっと地面に転がっていたポリバケツを投げつけてやったら追手の一人がすっ転んだ。
—ちぃ、くっそ!
走りながらちらりと振り返って見ると、派手に転び膝小僧を抱えてもんどりうつ様が滑稽この上ない。
ざまぁみろ、ほくそ笑んで前方に視線を戻すとなんとそこは行き止まり。
ちっ。なんてこった。
「・・ったく、めんどくせぇ。」
戦うしかねぇか。
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