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エピソード0
ピーー。
悲しいほどにまっすぐなその音が、部屋に響き渡る。
ベッドに横たわる千奈の顔はいつもと変わらず、ただ、眠っているようにしか見えなかった。
もうこの世の者ではない千奈の顔は、穏やかで、どこか微笑んでいるようにも感じられる。
「なあ、千奈」
呼びかけて、そっと頬をなでる。もちろん、返事はない。
人って、こんなにあっさり逝ってしまうんだなーー。そう言おうとしたが、言葉が出てこない。
代わりにあふれてきたのは、嗚咽と大粒の涙だった。
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