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しばらくすると、看護師さんが話しかけてきた。
「あの……千奈さんが、自分がもしも死んでしまったら、誠一さんにこれを渡してほしいとおっしゃっていて……」
そう言って、封筒を差し出してきた。
「ありがとうございます」
お礼をして、封筒を受け取る。可愛らしい見た目に反して、中身は分厚かった。
何が入っているのだろうかと思いつつ、手紙をポケットにしまおうとすると、看護師さんに慌てて止められた。
「あのっ、ここで読んでください!」
「え?」
「千奈さんが、できればすぐに読んでほしいとおっしゃっていたんです。渡すのはちょっと遅れちゃったんですけど」
「ああ、分かりました」
そう言って手紙を開いたはいいが、看護師さんの視線が気になってなかなか集中できない。
「あの、一人で読んでもいいですか?」
「あっ、すみません!」
看護師さんはそそくさと部屋を出ていった。これで心置きなく読める。
封筒には紙が2枚入っていた。
一枚目を手に取る。そこには、千奈特有の右上がりの癖字がいっぱい詰まっていた。
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