2. 友達

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「大丈夫? 顔色悪いけど」  伊原の声で我に返り、慌てて平気だと取り繕った。伊原曰く、相模は一つ上の学年らしい。名札の色で分かったそうだ。 「一個上ってだけでも緊張するのに、あんなガタイ良い男だと余計だよな」  伊原は独り言のように呟いた。恐らく、萎縮して何も答えられなかった私を励まそうとしているのだろう。その不器用でさりげない優しさに、涙が溢れそうになった。 「伊原、助けてくれてありがとう」 「別にいいよ、あれくらい」  伊原はそう言い残し、廊下の掃除に戻ろうとしたが、私はほぼ無意識に彼を呼び止めた。 「きょ、今日の放課後空いてる?」  伊原との罰ゲームは多香子たちの監視がある学校内だけの話で、放課後は除外されていた。けれど、私はゲーム関係なしに、助けてもらったお礼がしたかった。 「ごめん。これから新しいバイトの面接なんだ」 「あれ、コンビニのバイトしてなかった?」 「クビになった。目つきが悪すぎるってクレーム入って」  わざと自分の目を指で吊り上げる伊原に、私は思わず吹き出した。普段はそこまで悪くないよ、とフォローを入れると、伊原は「ありがと」と言い、手を振りながら廊下へと去って行った。  私を笑わせようとしてくれたのだろうか。今度は、伊原が空いている日に誘ってみよう。そう考えながら、顔が綻んでいるのがわかった。
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