2. 友達

7/13
前へ
/57ページ
次へ
「面接お疲れさま、どうだった?」  翌日、伊原に面接の手応えを確認すると、彼は珍しく険しい顔をした。 「多分駄目だ」 「え、なんで?」 「暗いって言われたよ。精一杯明るくしてるつもりなのに」  軽く溜息を吐く伊原を見て、なんだか居た堪れない気持ちになった。 「愛想が足りてないだけだよ! 試しに、ニッて笑ってみて?」 「……こうか?」 「うわっ……」 「うわっはやめろよ」  ぎこちない笑顔が可笑しくて笑う私に、伊原は少し不貞腐れた顔をした。なんだかそれが、かわいいと思った。 「うーん、堅苦しい喋り方がダメなのかな……」 「癖だからしょうがないだろ」 「いっそ、伊原でごわす! 一生懸命働くから雇って欲しいでごわす! みたいな口調でいってみなよ」  ふざけた声を出して茶化す私に「お前、アホか!」と伊原が笑った。友達になってから初めて見る、無邪気な笑顔だった。  胸が締め付けられる感覚がした。それが罪悪感か、別の感情かはわからなかった。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

113人が本棚に入れています
本棚に追加