2. 友達

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 あっという間に時が過ぎ、いよいよ来週から夏休みに入る。おばあちゃんの家に遊びに行くことと、予備校に通うことくらいしか予定は無かったが、なんとなく浮き立つ気持ちになっていた。 「そろそろさー、二人の関係にも刺激が欲しいよね。若葉、いい案ない?」 「うーん、スキンシップとか?」  多香子の問いに、若葉は参考書から顔を上げることなく答えた。すかさず遥が「何それ、エロ〜い!!」と囃し立てる。 「スキンシップねー、まずは手繋ぐとか? それならすぐできるでしょ!」  多香子から満面の笑みを向けられ、私は「あはは……」と曖昧な笑みを返した。それは肯定と取られ、早速今日、実行に移すことになった。 ✳︎✳︎✳︎ 「伊原……バイト決まった?」 「うちの母さん並みに心配してくれるな。決まったよ」 「え、おめでとう! 何するの?」 「ファミレスのキッチン。料理は元々するし」  伊原のエプロン姿を思い浮かべ、似合わないな、と表情を緩めていた矢先、多香子の厳しい顔が視界に入り、ハッと我に返る。 「あの、お祝いに飴いる?」 「俺は子供か。でもありがと」  差し出された細く長い指を見て、少しドキッとした。 「……くれないの?」    首を傾げる伊原を見て、私は慌ててポケットに入っていた飴を彼の手に握らせた。 「ありがとう」  伊原は手を離そうとしたが、私は黙ってその手を握り続けた。顔に血液が集中し、耳まで赤くなっているのが自分でも分かる。今にも火を吹き出すんじゃないかというくらい、熱い。 「どうした?」  伊原がゆっくりと尋ねた。手を振り払ったりせず、落ち着いた声色で問い掛けてくれるところが、伊原らしいと思った。 「ごめ……嫌だったよね」 「別に嫌ではないけど……人の手って生ぬるいんだな」  真面目な顔をしてしみじみ言う伊原に、思わず笑みが溢れた。 「温かいって言うんだよ」  そう言う私に、伊原はなるほど、と返した。
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