2. 友達

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 昼休みになり、重い足取りで多香子の元へ向かった。 「なな、積極的だったね〜」  遥が興奮した様子で、私を肘で突いた。 「遥、うるさい。小学生じゃないんだから」  多香子に注意され、遥は叱られた仔犬のように静かにうなだれた。若葉はそれに見向きもせず、参考書を読みながら弁当をつついている。 「あれくらいはすんなりやってもらわないと困るよ。夏休みはアイツの家にお邪魔するんだから」  多香子は目を輝かせながら、そう言った。「そんなの聞いてない」と焦る私を見て、「だって今言ったもん」と愉快そうに笑った。 「ちょっと面白いこと考えてるの。決まったら伝えるから! 楽しみにしておいて」  そう言って多香子は若葉の腕を組み、教室から出て行った。遥も彼女たちの後に続いた。取り残された私は、気を晴らすため、人通りの少ない駐輪場近くの自販機に向かった。 ✳︎✳︎✳︎  自販機に辿り着くと、一人の男子生徒が自転車を停め、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。時刻は昼過ぎなのに、自由でいいなと思いながら、どのジュースにするか迷っている時だった。 「ねぇ、決まった?」  背後から急に声を掛けられ、体が跳ねた。 「す、すみません! お先にどうぞ」 「そんなに怯えなくても……」  声の主は、私でも知っている同学年の有名人だった。神堂(しんどう) (ゆい)。その中性的で端正な容姿と、ミステリアスな雰囲気で、女子の人気が凄まじい。噂によると、学校には滅多に来ず、誰とも連まず一人でいることが多いそうだ。 「美形だと、ぼっちも一匹狼になるからいいな……」 「はい?」  声が出ていたことに気が付くまで、数秒かかった。怪訝な顔でこちらを見つめる神堂に慌てて謝罪しようとしたが、遅かった。 「なんなの、その卑屈な考えは……。それに僕ぼっちじゃないし。友達一人いるし」  神堂は(しか)めっ面で私に詰め寄った。噂とは異なり、意外と感情が顔に出るタイプのようだ。 「ご、ごめんなさい。ジュース奢ります……?」 「いい、いらない」  彼はそう言い放ち、スタスタと歩いて行った。なんてマイペースな人なんだろう。私もあんな容姿で、あれくらいはっきり物が言える人だったら、多香子の言いなりになんてならずに済んだのかもしれない。  あり得ない妄想を掻き消し、ジュースを買った後、教室に戻った。
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