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「てか蛍くんさぁ、いい加減スマホ買ってよ!」
教室の出口で神堂が振り返り、口を尖らせて言った。
「お金もったいないし……固定電話で十分だろ」
面倒臭そうに答える伊原に、「いつの時代の人?」と神堂が呆れ気味に突っ込む。
「私も伊原とメールとかしたい……」
口をついて出た言葉に、自分でハッとした。
「あ、いや、違くて……」
慌てて訂正しようとしたが、遅かった。顔がみるみる赤くなるのが自分でも分かる。そろそろ多香子たちも戻ってくる頃だろう。早く昼休み終了のチャイムが鳴ってくれと願った。
「へー……なるほどね。分かるよ、蛍くん顔は悪くないもんね」
「そういうのじゃないから!」
神堂がニヤニヤしながら私を見つめる。違う、そういう意味じゃなくて、家にいても暇だから、そんな時に伊原と話せたら楽しいなと思っただけ。それだけなのに、なかなか言葉が出てこなかった。
伊原は一人「固定電話じゃ駄目なのか……?」と言っていて、全く話についてこられなかったようだ。胸を撫で下ろし、自分のクラスへ帰る神堂を見送った。
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