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2. 友達
伊原と友達になる契約が開始されてから、1週間が経った。毎日の昼休みの時間は、私から多香子たちへの進捗報告に使われた。
「二人とも、全然距離縮んでなくない?」
遥が卵焼きを頬張りながら、箸の先を向けて言った。確かに、先日廊下で話したきり、私たちは言葉を交わしていなかった。そこで、多香子から新たなミッションが課せられた。
この罰ゲームの醍醐味は、伊原が私を信用し切ったタイミングで種明かしし、反応を楽しむことだという。仲良くなるための第一歩としては、とにかく伊原に興味があるフリをして、会話を繋げること。
「夏休みまであと2ヶ月切ったし、少しは楽しませてよね」
多香子は爪をいじりながら、溜息を吐いた。拒否する権利も勇気もない私は、彼女の言う通り、早速その日から行動を起こした。
✳︎✳︎✳︎
「い、伊原……。今日返ってきた数学のテスト、何点だった?」
授業が終わってすぐ、彼が机に伏せる前に声を掛けた。この1週間、彼のことを観察だけはしていた。休み時間こそイヤホンを付けて突っ伏しているが、授業中はいつも真面目な顔をして、話を聞いていた。神経質そうな顔をしているし、頭が良いのかもしれない。勉強の話なら、乗ってきてくれると考えた。
「28点」
「え?」
聞き間違いかと思い、思わず聞き返す。
「に、28点?」
「うん」
「めちゃくちゃ赤点じゃん……。伊原、もしかして頭良くないの……?」
「なんだそれは。偏見だ。俺みたいな暗そうな見た目なら、頭が良いと思ったか?」
不服そうに伊原は言う。
「真面目に授業聞いてるように見えたから……」
「暇だから前を向いてるだけだ。頭には何も入ってない」
「なんでそんな自信満々なのよ!」
大真面目な顔をして答える伊原に、思わず突っ込んでしまった。
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