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1.
23時過ぎ。
煙草が切れたのと無性にアイスが食べたくなったので、コンビニに向かう。
春なのに肌寒い夜道を進んだ先。白熱灯が暗闇を照らす。
コンビニの外に少年が座っている。
幽霊かと思ったけど、影がちゃんとある。
『何故こんな時間に、こんな所に?』という疑問を持つと同時に、浮かぶのはネガティブな想像。
目があった。5秒ほど。
でも気の利いた言葉が出ず、店内へ逃げる俺。
アイスコーナーから漂う冷気に当たりながら、少年も体感的にはこんな感じなのかな、なんて勝手に考えている。
店から出て少年がまだいるのを確認すると、コンビニの袋からホットのココアを渡した。
少年は目を丸くして見上げる。店の灯りに照らされて、ビー玉のようにきらめいている。
戸惑う少年に「間違えて買ったから」と嘘をついて押し付けると、恐る恐る両手に持つ。
隣にしゃがんで、缶コーヒーを飲む。
2人並んで缶を傾け、息を吐く。
ほっとしたような顔が見えた。
この缶を飲みきるまで、黙って並んでいた。
飲みきると、示し合わせたかのように立ち上がり、お互いに別方向を歩き出した。
振り返ると、少年が小さく手を振った。
俺も小さく手を振った。
次の日の同じ時間に、またコンビニに行った。
少年はいなかった。
俺は安心したような、後悔したような波に飲み込まれる。
それでもきっと明日も、俺はコンビニに行くのだろうなと思った。
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