鴨川アイロニー

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 川面で光の粒が跳ねている。  鴨川デルタ、という呼び名はこの街に来てから知った。  今ではK大を舞台にした小説のおかげで全国区になったが、元はといえばK大中心のスラングであったろう。ま、いずれにせよ大学からほど近いその場所は、いわゆる観光名所ではないが、いつもけっこうな人出だった。  柳の緑と水面の光の瑞々しさ。梅雨の晴れ間は誰にも平等に貴重で、いっそ残酷なほど美しい。
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