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しかし、先生はなかなか首を縦には振らない。一体どうやって説得するか考えていると、後ろから「いいじゃないですか、坂本先生」とゆったりとした声が届く。
振り返ると白髪の男性が立っていた。恐らく教師の1人だろうが、一体誰だろうと思っていたところ、凛ちゃんが「及川先生」とポツリと呟く。
この人が美術の及川先生――凛ちゃんが以前、過去のパネルの写真を借りに行った人か。
「やらせてあげたらいいと思いますよ。こんなにお願いしてるんですから。
それに、この子たちの作品なんだから、この子たちに直す権利はあるはずです。それを私たちが奪ってはダメでしょう」
及川先生は、凛ちゃんと俺を交互に見て微笑む。さっき、自分が心の中で思ったのと同じようなことを言われ、まるで全てを見透かされているような妙な感覚に陥った。
「でも、一度会議で決まったことですし……」
「管理職なら私が説得しましょう。審査員長の権限で」
言葉尻を濁す坂本先生に向かって、及川先生はそう言い切った。
「ありがとうございます」と凛ちゃんが隣で頭を下げる。及川先生はその様子を一目見て、優しく微笑む。
その表情を見て違和感を覚えた。
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