絶望と希望

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「佐倉くんの提案通りに、あくまでも中止の判断を遅らせるだけです。 一ノ瀬さん。40年近く美術の教員をやってきた僕の立場から見ても、これを短期間で元通りの綺麗な状態に直すのはと考えるのが妥当です。 だから、無理だと思ったら、いつだってやめてもいいと思います」  先程感じた違和感が何だったのか、その言葉を聞いて結びつく。  この人――笑っているのに、目が一切笑っていない。  優しい口調で諭すように話しているのに、話す内容はあまりにも冷酷だった。味方をしているように見せかけて「無謀な挑戦は辞めるべき」と言われているような、そんな気分になった。  しかし、今更前言撤回することなんてできず、とりあえず体育祭当日までにパネルを直すこと・明らかに間に合わない場合はすぐに報告することを条件に、俺たちは猶予を得た。  昼休みに続いて、放課後も実行委員の作業を抜けられるようにお願いし、人数はいた方がいいのは間違いないだろうと、クラスメイトにもできる限り作業に協力してもらえるように頼んで、放課後を迎えた。  難しいとは思っていたが、やっぱり予想通り――いや、予想以上に作業の進みは悪かった。
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