ずぶ濡れスーツの王子様

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さて、話を戻そう。どうして、俺が雨が降りだしたロンドンの街角を、必死になって走っているかだ。 まず、今朝のことだ。出掛けに唯愛の様子が少しおかしかった。 「唯愛、どうかしたのか?」 「うん。…ちょっと、お腹がね。」 「お腹?…お腹の具合良くないのか?」 「お腹の具合は、普通だよ。」 「じゃあ、赤ちゃん、元気ないのか?」 「違う。赤ちゃんは、すごく元気だよ。さっきも、くいくいって、中から押してきてたから。 何て言うのかな…お腹全体が、いつもより、もっとはち切れそうな感じなの。ぱつんぱつんになってるんだよね。…でも、痛いとかないし、気分も悪くなってないし。」 そう言えば、歩くのが少し辛そうだよな。よく立ち止まってる。 「唯愛。今日は、家事をするな。大人しく横になってろ。いいか、片付けは、帰ってきたら手伝ってやるから、絶対にするなよ、いいな。」 「…うん。わかった。ごめんね。」 「なんで、謝るんだ?気を遣うところじゃないだろう。 今日は、大事な商談があるから、会社へ行ってくるけど、ちょっとでもおかしいって思ったら、病院へ行くんだぞ。 何かあったらいけないから、隣の奥さんに、声掛けとくからな。」
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