第八章 虚構

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 さらに、コルティの背中を通して、大魔王の死角から振り上げたもう1本の白銀の斧が、大魔王の左手で受け止められていた。 「どうした? 結界で音は外には漏れぬようにしてある。遠慮なく打ち込んでくるがいい」  大魔王の表情は一向に揺るがない。 「では存分に………」「うむ」  コルティの姿が空間の裂け目の中に消える。そして秒に満たない時間で、コルティは大魔王の背後の空間から姿を現すと、抜けてきた空間の裂け目に両手を突っ込み、新たに2本の白銀の斧を取り出した。  だが左右から挟み切るかのような両手からの一撃は、背中を見せたままの大魔王の両側面に発生した黒い障壁によって阻まれ、同時に障壁から発せられた振動が、左右の白銀の斧の刃を塵へと変える。 「終わりか?」「まだですっ!」  大魔王の全周から空間が割け、白銀の斧が無数に現れた。コルティは空間から空間へと移動し、姿を現す度に両手から白銀の斧を放ち続ける。だがあらゆる角度、死角を突いた奇襲同然の攻撃は、全て大魔王の腕や障壁によって受け止められ、直後に粉砕される。  ついに白銀の在庫を使い果たしたのか、コルティは両手に何も持たないまま腰を深く落とし、大魔王の体へと正拳を叩き込んだ。  瞬間、大魔王の体を大量の魔力が貫き、背後へと通り過ぎる。腹部を中心とした大魔王の服は大きく裂け、背中のマントに穴が穿かれていた。 「ふむ………実に懐かしい技だ」  喉を鳴らしながら笑い、大魔王の服とマントの破損が元の姿に戻っていく。 「見事だ」 「いえ………私の負けのようです」  大魔王に拳を向けていたコルティが、前のめりに倒れ始める。
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