第八章 虚構

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 すれ違うように倒れていくコルティの体を、大魔王が右腕で抱くように支えた。 「ただの脳震盪だ。しばらくすれば足に力が戻る」 「は、はい………」  下半身どころか、両腕も力が入らず、だらりと下がったままである。コルティが八頸によって自身の魔力を拳から大魔王へと送り込んだ際、大魔王は左手でコルティの頭部の毛に触れており、その点を通じて魔力を送り込み、彼女と同じ技を放っていた。  大魔王の送った魔力は、全体からすればコルティの魔力量に及ばないが、細い針のように一点に集中させた魔力はコルティの頭部を直撃し、行動不能へと追い込んでいた。 「お手数を、おかけ、しました」  数分後、コルティは大魔王の腕から離れ、自身の足で体を支え始めた。それでも震えたままの膝に手を乗せ、崩れそうになる体を維持しようと、必死にバランスを保とうとすしている。 「無理をするな」  大魔王が無理矢理ベンチへとコルティを運ぶ。 「やはり、4年の旅は無駄ではなかったようだ」  以前会った時よりも遥かに強くなっていると、大魔王が満足する。一方のコルティも、大魔王の声は耳に届いているが、朧げな目を開けると世界が回転し、吐き気に襲われるため、座り込んだまま顔を上げることが出来ずにいた。  コルティの意識が次第に遠ざかっていく。 「約束だ………お前の疑問に答えよう」  薄れゆく意識のコルティの前で、大魔王が話を続ける。 「余の魔力………お前の空間を操る能力、そしてあの娘の魔力増幅。余とお前達の目的を達成させるためには、高度に精錬された技が必要なのだ」  そして4年近い旅によって、2人の能力は飛躍的に向上したと満足そうに頷く。
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