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せめてものの感謝としての提案に、相田も彼の好意に感謝しつつ、笑顔で返した。
「ありがとうございます。既にロデリウスからも、似たような話を受けていて………こんな素性の分からない人間を受け入れて頂き、感謝します」
相田はキールに対して、領主の息子という肩書に合わせた言葉遣いに直していく。
だが、キールは顔の前で手を振って、苦笑する。
「仕事上のやり取りではないのですから、僕には、そんな改まった言葉はいりませんよ。それにしても、冒険者の人達は、皆荒くれ者達のような性格を想像していましたが、あなたのように優しい方もいらっしゃるのですね」
―――優しい。
相田の中で、彼の言葉が必要以上に体の中で音を立てて落下する。褒め言葉を代表する単語であるはずが、今では必ずしもそう聞こえなくなっていた。
「ありがとうござ………いや、ありがとう。だけど、君程じゃない。俺も領主の息子と聞いて、もっと威張り散らしているものだと想像していたよ」
相田は、昔見た物語を思い出しながら体を反らし『僕のお父さんはね』と、意地悪く自慢振るように演じて、キールを笑わせる。
「成程、それではお互い様ですね」
「ああ、そうなるかな」
相田は軽く両手を広げ、一緒に笑って見せた。
数分後、2人の会話の間に使用人から朝食の準備が整ったとの声が入り、2人は一緒に屋敷へと入っていった。
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