序 章 馬車に揺られて

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 星が大地に降り注いだあの大災害。いつしか人々が『星降りの天災』と呼ぶようになった日の夜。シモノフの大関所まで撤退していたコルティ達の前に、突如、大魔王が姿を現した。  彼は3か月後に、カデリア王国の旧王都であるブレイダスの街に来るように言伝していたのである。 「クレアさん、行きたがってましたね」 「仕方ありません………今やあの人は、両王国にとって、なくてはならない方となったのですから」  大貴族の出で、この戦争唯一の生き残りであったクレアは、戦死したバージル家当主の後を継ぎ、ウィンフォス王国の首脳陣と共に戦後処理について検討し合っていた。  既にカデリア王国には決定権を持つ王がおらず、なし崩し的な処置ではあったが、ウィンフォス王国は彼女をカデリア王国の代理として公認し、交渉における全権が与えられた。併せて、シモノフの大関所に留められているカデリア王国の大量の難民達の管理も急務となっており、そちらは勇者のリコルと妹のマキが自ら担当を名乗り出た。 「3か月………あっという間だったねぇ」 「ええ。本当に」  顔を合わせずとも、コルティもカレンも、互いに同じ表情に落ち着く。  カレンはブレイダス攻城戦において重傷を負うも一命を取り留め、シモノフの大関所跡で数日間療養、その後は王都へと搬送され、病院の窓からウィンフォスの街が復興していく様子を、自分の無力さに圧し潰されそうな苦悩と共に見届けていた。
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