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第一章 跡地
王都ブレイダス。
カデリア王国の首都であり、人口は2万を超える大都市であった。四方を強固な壁で覆うだけでなく、街が複数の城壁で区分けされ、常に侵入者を半包囲できる状況を作り出す鉄壁の守りをもつ城塞都市。その区画は計画的で、様式美と機能美を兼ね備えた街でもあった。
「ここが、あのブレイダス」
コルティが息を呑んだ。
「私達………3か月前まで、ここで戦っていたんだよ、ね」
カレンも足が動かなかった。
目の前に広がるのは、巨大な円形の窪みの集合体のみ。あれほどの大きさを誇っていた街は、跡形もなく消え去っていた。
「ここが俺達の故郷さ………」「ええ………本当に何も残っていないんです」
馬を降りた元勇者のリコルが、妹のマキと共に2人の疑問に答える。
城壁の一部、建物を構築していた石材や木材が部分的に残ってはいるものの、遺跡と呼ぶにも値しない状態であった。
「これが星降りの威力と代償」
コルティは冷静に3か月前を思い返す。
ブレイダスから遠く離れた場所ではあったが、天頂から薄青い空を一直線に貫く無数の光が大地に降り注ぎ、巨大な振動と衝撃波を生み出した恐怖は今も忘れようがない。
「ご主人様………」
当初から『星降りの天災』の原因が、コルティが主人と崇めた者の魔法であると彼女は確信していた。彼の放つ魔法や技は、どれもが世の理を無視した出鱈目の強さであったが、この技はそれ以上であった。
「3か月も音沙汰もなく、最後まで戦っていた場所は跡形もない………これじゃぁ」「お兄様!」
マキにぴしゃりと言葉を止められるリコル。
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