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「手がかりが………」
コルティが砂を抱きしめながら膝をつく。
「コルティ………前を見て」
そこにカレンが前を指さした。
コルティが涙目のまま前を向くと、そこには大地に突き刺さる黒い剣が静かに立っていた。
「剣? これは、彼の魔剣かしら?」
「いや、禍々しさは同じだが………随分と形が違うな。この剣は片方にしか刃がない」
マキの言葉に、実際に剣を交わしてきたリコルが訂正する。相田の愛用していた魔剣が両刃に対し、今目の前に立っている剣は片方にしか刃がついていない。さらに刀身はより長く、しかし幅は一般的に使われている剣の半分ほどの狭い造りであった。
「コルティ、これって」ケリケラが思い出す。
「ええ。この剣は………ツヴァイールの剣、確か『刀』だったと思います」
3か月前の記憶を思い返し、相田と別れる前、魔王軍の中心の1人だったライカンスロープ族のツヴァイールが相田に託したものだったとコルティが説明した。
「でも、この刀は………彼がご主人様に預けたもの。それに、色も全く違う」
「だが、残っているのはこの剣くらいのようだ」
リコルがわざとらしく周囲を見渡すが、見えるのは瓦礫、砂、鉄のように溶け固まった大地だけであった。
「どう、しますか?」
それ以上会話が進まなくなり、カレンがコルティ達を一瞥して声をかける。
風が強くなる。目の前の砂が南へと運ばれ、北から新しい砂が置かれていく。それは変化であり、不変であった。
「3か月後、か。一応、今日がその日なんだが………時間までは言ってなかったな」
「もう、街に戻る時間はありませんね。一番近いゲンテの街でも夜になるかと」
マキがコルティかケリケラに決断を求めるように視線を送る。
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