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「青い、海……」
覚えているのは、その言葉だけ。細い足でずっと歩いて歩いて、歩き回ってーー。
異人館街はそれほど広いわけじゃない。途中、北野天満宮を見つけ、なけなしのお賽銭まではたいてお願いしたが、彼女の探し物は見つからなかった。
「……無理、かぁ」
もう、帰らないといけない。帰りたくないけど、帰らないといけない。重たい足に、空っぽのお腹はひもじい音を奏でる。
「これ、食うか?」
「ーーっ!?」
そこにクレープを持って立っていたのは、さっきの『誘拐犯』だった。
「あー、俺は誘拐犯じゃないって。そもそも、こんな人目のあるところで出来るわけないだろう?」
「……」
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