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甘い。生地はもっちり、カスタードは濃厚で中に潜んでたイチゴの甘酸っぱさを引きたててくれる。一気に食べ終えてひと息つくと、男はフッと笑った。
「なんか、悩みでもあるのか?」
家に帰りたくない理由がーー。
「なら、帰らなくていいんじゃないか?」
そんなわけにはいかない。
「話してみないか? それだけでもすっきりするぞ?」
話しても、何も解決なんてしない。誰も解決できない。だってーー。
「なら、逃げろ。俺が手伝ってやる。どこに逃げたい?」
どこ……? 遠い所へ、私を知らない、誰も知らない、遠くが、いい……。
「商談成立だ」
あかりは、意識を手放した。
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