192人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
俯くあかりの頭を、みゆきは優しくなでた。
「でも、会いに来てくれて嬉しいわ。よくこの手紙を持ってたわね」
「……他の手紙は全部捨てられて、だから他になくて」
「今、どこに住んでいるの?」
「ーーっ」
「ごめんね、前の住所に送ったら宛先不明で返ってきちゃったの。引っ越したの?」
頷くあかりに「そう」とみゆきは優しく返す。
「お婆さんは、お元気?」
「……」
「あかりちゃん?」
「……帰る」
小さくそう口にすると、あかりは立ち上がった。
「あかりちゃん?」
「すみません、迷惑かけて……、でも、もう帰ります」
「ま、待って! それなら連絡先だけでも」
「……ごめんなんさい」
立ち去ろうとするあかりの手を掴んだのは、アレックスだった。その手を見て、彼は小さく息を吐きだした。
最初のコメントを投稿しよう!