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三宮から北野異人館まではゆるやかな坂が続く。途中、再建移築されたスターバックスで足を止めたが、入ることなく彼女は歩いて、息を切らせながら北野異人館街にたどり着いた。
ここは観光地だ。当然人は多く、彼女は呆然としてしまった。
この中から、見つけることが出来るだろうか?
それはまるで、海辺の砂浜からダイヤモンドを一つ見つけるくらいの、奇跡なんじゃないだろうか?
「ぼーっとつっ立ってんな」
「す、すみませんっ」
肩がぶつかり倒れそうになる。何とか転ばずにすみ、彼女はリュックを背負いなおした。
とにかく探そう、時間がないのだ。もしかしたら、運が良ければ見つかるかもしれない。そこまで考えて、彼女は思いっきり苦い笑みを浮かべた。
運なんて、当の昔に無くしてるのに。
そう思いながらも、彼女は歩き始めた。あてはない、ただひたすら異人館を歩いて回った。一番目立つのは風見鶏の館だろう。そしてその近くにある萌黄の館も、見学するためのもので誰かが住んでいる館ではなかった。他にも無料で見学できるラインの館、アメリカ領事館者だった美術館、どれも人が住んでいる館ではなかった。
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