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それから1週間後。
リュックを背負った女の子が神戸駅に降り立った。
「知らなかった。異人館って全部同じところにあるんじゃないのね」
あの手紙は、みゆきが姉に宛てたもので『異人館に住むことになったの』という内容が書いてあったのだ。だから彼女はこの異人館街で探していたのだが、みゆきの家はここではなく違う場所に建てられた異人館だった。
なのに、探し人に会えたのは奇跡だ。
「ちょっとだけ、異人館回ってみようかな」
前回はその情緒も何もかも、感じる余裕すらなかったから。だから少しだけ寄り道をして三ノ宮駅で途中下車した。
前と同じ道を歩いてみる。誰もが明るい顔をして歩いてる。きっと自分も同じ顔をしているだろう。
異人館のスターバックスを見つめて、彼女は足を止めた。あの時は入るなんて選択肢は欠片もなかったのだけどーー。
「カーノジョ、お茶でもしない?」
「ーーっ!?」
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