初めての神戸

9/12
前へ
/35ページ
次へ
「僕が手伝えることかな?」  その提案に、彼女は少し考えてそれからゆっくりと首を横に振った。その態度にアレックスは「そっか」と答えて少し彼女から離れた。視界から消える陰に顔をあげると、彼はにこりと笑う。 「これ、僕の名刺。困ったことがあったら電話しておいで。そうそう、変な人について言っちゃダメだよ? 君は可愛いから」  彼は本当に優しい人なんだろう、こんながりがりの自分を『可愛い』だなんていう人は、いままでいなかったから。 だからあかりは「ありがとうございます」と頭を下げて、その場から逃げるように走り出した。  見つかるかもしれない、こんな奇跡が起こる町なら、見つけることが出来るかもしれない。  そう思って、見える異人館を全部回った。巡っている途中、歩く街並みはただの住宅街だ。  けれどそのマンションやアパートも、ずっと見て回った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加