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 上手くいくかどうかも不明な恋路の手伝いは気が重い。しかし星野に任せておいても、到底上手く行くとは思えなかった。こいつのセンスは壊滅的だ。  少し悩むようにしていると、星野が「ここ奢りにしとくから」と付け足した。 「わかった。じゃあ、今日の仕事上がりにどこかでプレゼントを見繕うの手伝ってやるよ」  馬鹿みたいな話だけど、と言われたのにはわけがある。  というのは星野はとても惚れっぽく、今回のようなことが初めてではないからだ。僕としても「またか」という思いがあるのだが、懲りずに新しい恋をする星野が、少し羨ましい。  尤も、何故新しい恋がすぐに芽生えるかと言うと、残念ながらその恋がなかなか実らないからに他ならなかった。  仕事が終わってからショッピングモールで298店員へのプレゼントを二人で物色する。 「これなんかどうだろう?」 「ピアス? 彼女にピアスホールはあるのか? というか付き合ってもいないのにピアスを贈られて気持ちの良いものだろうか」 「駄目か? 可愛いと思ったんだけど……ピアスホールは、どうだか知らん」 「駄目だろ」  僕は嘆息し、店内をきょろきょろと見回してみる。何か無難なプレゼントはないだろうか。 「あ、星野。これとかは?」  僕はそれを手に取って、星野に見せた。 「──ハンカチぃ?」 「このくらいの値段のが気負わなくていいだろ」 「こんなん喜ぶか?」  星野は僕の手からハンカチを受け取り、いろんな角度からまじまじと眺めている。シンプルだが色合いの綺麗なハンカチ。僕としては良いかなと思ったが、外しただろうか。 「まあでも……お前が言うなら間違いないか」  何故か僕のセンスに絶大な信頼を持っているらしい星野は、それを購入することに決めたようだ。これで上手く行くといいのだが、僕は応援しか出来ない。 「お前もさあ。298に一緒に来てくれるよな?」 「え。そこまで付き合うのか?」 「頼むよ。最後の恋にしたいんだ。俺の151番目の恋、なんとか成功させたい」 「151……!?」
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