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 151番という数字にはさすがにびっくりだ。どんだけ振られているんだ星野。可哀そうになってきた。仕方ない、298に付き合ってやろう。 「いつだ?」 「今夜、この勢いで俺は298に行く!」 「そうか、わかった。毒を食らわば皿まで。僕も付き合うよ」  毒ってなんだよ失礼だな、と自分自身に突っ込みを入れながら、僕達はプレゼントを選んだその足で、彼女のいるであろう298へと向かったのだった。 「いらっしゃいませ」  焼肉レストラン298は週末ということも相俟ってそこそこの集客率だった。店員が忙しそうに動いている中に、星野の盗撮フォルダにあった例の女性店員の姿が見て取れた。 「あの子だ……どうしよう。俺緊張してきた」 「落ち着け星野。今は無理だ。めちゃくちゃ忙しそうじゃないか」 「じゃあ、いつ? いつ言ったらいい?」 「とりあえず注文を取る時に……あの子が来てくれたらラッキーなんだけど」  別の店員の案内で窓際の席に座った僕達は、メニュー表を見ながらも彼女の動向を探っていた。くるくると動き回る彼女はとても個別に声を掛けられるような状態にはない。 「無理……じゃないか?」 「諦めてどうする! 俺の151番目の恋を……お前は応援してくれないのか?」 「いやしてるけどさ。逆効果じゃないかなあこのくそ忙しいのに」 「やってみなきゃわからん」  なんだろうなこの気概は。この勢いで振られてきたんだろうかこいつは。再度可哀そうな視線を向けていたら、なんと彼女が僕達のテーブルに寄ってきた。 「ご注文、お決まりでしょうか?」  にこりと笑んだ彼女に、先ほどの勢いはどこへやら、星野は固まってしまった。仕方なく僕が適当に注文をしながら、星野へ目配せをする。しかし口がぱくぱくと動くだけで、次の言葉が出てこないようだった。 (おい、星野)  小声で言った僕に、星野は我に返ったのかぶるりと頭を振った。 「あのあのあの、俺星野って言います。あなたが好きです付き合ってください。これプレゼントです受け取って貰えますか。次の休みにデートとかいかがですか」
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