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「馬鹿みたいな話だけど」  急に切り出された僕は相手を見て次の言葉を待った。僕の前にいる同僚の星野は、昼食のナポリタンを口に入れながらも神妙な顔をしている。 「この前さ、新しく出来た焼肉屋に行っただろ?」 「ああ。『298(ニクヤ)』だっけ?」 「そうそう。そこにいた店員のお姉さんのことがさ……忘れられないわけよ」  星野は皿の端にフォークを下ろすと、自分のスーツの内ポケットからスマホを取り出した。 「これ……この子」 「星野! これって盗撮じゃないのか」 「盗撮なんかじゃない。通りかかったところを偶然写真に収めただけだ」 「いやいやいや……」  僕はちょっと呆れながら、テーブルに置かれたスマホの写真フォルダを眺める。  忘れられない298店員のお姉さんは、僕達より少し年下に見えた。もしかしたら大学生のアルバイトなのかもしれない。  盗撮写真は全部で3枚。星野は盗撮ではないと言うが、本人の同意を得ていない以上やはり盗撮に思える。  まあそれは今はいい。どうして星野がその話を僕に振るのか。 「んで? 星野はどうしたい」 「付き合いたい」 「……ほう」 「今度298に行って、彼女に会えたら、デートに誘うつもりでいる」 「いきなりか」  298の店員さんは可愛らしく、彼氏なんてとっくにいるのではないか。星野は正直イケメンの部類には属さない。平々凡々な容姿をしているのはとりあえずいいとして、うっかり盗撮などしてしまう、僕にしてみたらちょっとドン引き案件持ちの男だ。 「プレゼントを……しようかなと」 「いきなりか。まずは友達から……」  本日二度目の「いきなりか」。何やら星野は先走っていないだろうか。色々不安だ。  とりあえず昼食を食べ終わり、レジにて会計を済ませる。レジ係が「930円です」と告げたので財布から1000円札を出そうとして、僕は止まる。 「あれっ。財布がない」 「マジか。とりあえず立て替えておいてやるよ。……ああそうだ。その代わり、彼女へのプレゼントを選ぶの、お前も案を出してくれないか」 「え、いや……」
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