アンダーコンストラクション

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 まず、Xの目に映ったのは、澄んだ青だった。  青い、青い、空だ。向日葵に囲まれた長いアスファルトの坂道が目の前にあって、遠くに煌めいているのは海……、だろうか。強く明るい日差しが降り注ぎ、海と空との間には真っ白な入道雲が立ち上っている、けれど。  青い空に、著しいノイズが走る。ディスプレイの不調かと思い、周りのスタッフもXの肉体と装置との接続を確認するが――どうも、異常があるようには思えない。その間にも、青い空は徐々に色を失っていき、ブロックノイズによって風景に抜けが生まれていく。 「何だ、これ……」  ぽつり、と。Xが呟いたことで、それが「Xの視界上の出来事」であることがはっきりする。つまり、ディスプレイがおかしいのではない。この『異界』で、今まさにこのような現象が起こっているということだ。  呆然とその場に立ち尽くすXであったが、突如、ぱんぱん、という手を叩くような音が響いて、空に色が戻ってくる。まだブロックノイズはいくつか残っていたが、それでも風景はXの目にはっきり映るようになる。  そして、声が、スピーカーから聞こえてくる。 「ちょっとちょっと、そちらさん!」  Xが振り向けば。  見上げる空と同じ、青い服をまとった女が、Xの背後に仁王立ちしていた。
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