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計画2
一瞬嫌な気持ちでインターホンを押していた時の事を思い出す。
頭を左右に振って気を取り直しインターホンを押した。
すると矢野が"待ってました"と言わんばかりの勢いでドアを開け、鈴木は少し驚いた。
「お……お待たせ。お口に合うか分からないけれど……」
「ありがとうございます、鈴木さん」
「タッパーは後日でいいからまた袋に入れてドアノブにでも引っ掛けておいてくれればいいからね?……じゃ」
自室に戻ろうとした時に「あ、鈴木さん」と矢野に呼び止められ振り返る。
「もし良かったらお茶して行きませんか?いいコーヒー豆を手に入れたんですよ。ね?」
「あー……。ごめん、まだやる事があってね」
正直、矢野の部屋には嫌な思い出しかなく、あまり気が進まないので丁重にお断りをした。するとグイッと強い力で腕を掴まれる。
「そんな事言わないで?飲んでってよ、ね?」
あまりの強い力にちょっとドキッとしてしまう。
「えっと……。あの……」
「ね?鈴木さーん、いいでしょ?ね?」
推しに弱い鈴木は「じゃあ少しだけ……」と言って自室に向けていた体を矢野の方へ向けた。
「やった」と微笑んで部屋の中の方を見ると"掛かった"と矢野は下を向き、ほくそ笑む。
コーヒーの中には追加で購入した例の薬を溶かし入れている。
それをオッサンに飲ませればーーー
「どうぞ。上がって?」
「う……うん」
【大丈夫。落ち着いて……。矢野くんを信じよう】
「じゃあ少しだけ……。失礼します」
そう言って鈴木が玄関の中に入った時、ドアが大きく引かれその肩を掴む者が居た。
驚いた鈴木が振り返ると走って来たのかハァハァと息をきらせた間宮だった。
「間……宮くん?」
「鈴木さん、ただいま。部屋に行きましょう。俺、腹減りました」
「あ……うん。矢野くん、ごめんね?待たね」
「あ……。えぇ、また……」
玄関ドアが閉まる時に間宮が矢野を睨みつけていた。
「間宮くん、お帰りなさい。いつもより少し早めだね」
「……鈴木さん、ちょっと」
間宮が鈴木の手を引いて廊下を歩くと自分の部屋の鍵を開け、中に鈴木を連れ込んだ。
「くそっ。あと少しだったのに!」
矢野は台所の戸棚を蹴りつける。
「間宮の野郎……」
矢野は間宮の睨みつけていた顔を思い出し、ギリ……と歯ぎしりをした。
「鈴木さん、どういうつもりですか?何故あんな奴の部屋になんか……」
「……ごめんなさい」
「"ごめんなさい"……じゃないですよ。あんな事があったのに。貴方、危機感無いんですか?」
「……」
黙り込む鈴木に間宮はハァと溜息をつく。
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